コム朝日記

廉価食パンについての哲学

平7民2 法人の機関の責任/使用者責任

A社団法人の事務・事業をその理事Bが行うにつき、Bの過失によりCが損害を被った場合において、責任の性質を踏まえながら、AのCに対する不法行為責任、BのCに対する不法行為責任、AがCに損害を賠償した場合におけるAのBに対する求償の可否・範囲について、Bが被用者である場合と対比して論ぜよ。

Q.使用者責任(715条1項)の根拠と法的性質はなんですか?

 使用者責任は,①本来被用者のみが固有に負うところの不法行為責任(709条)の追及のみでは相手方の救済のためには不十分であること,②使用者は被用者を用いることで利益を利益をあげているのだから被用者が第三者に与えた損害についてもリスクを負ってしかるべきであること(報償責任原理)を根拠として認められる責任です。

 根拠①から,使用者責任は被用者が第三者に対して不法行為責任を負うことを前提としているといえるので,使用者責任の法的性質は使用者固有の不法行為責任ではなく,被用者に代わってその責任を負う代位責任であるといえます。

 

Q.使用者責任と,被用者固有の不法行為責任の関係はどうなりますか?

 使用者責任の根拠①から,使用者責任は被用者が第三者に対して不法行為責任を負うことを前提としているので,被用者は固有の不法行為責任を負うことになります。

 この被用者固有の責任と,使用者責任とは,【連帯関係…?】

 

Q.使用者の被用者に対する求償権(715条3項)の根拠と法的性質はなんですか?

 前述の使用者責任の根拠①からは,使用者が被用者に代わって果たす責任はあくまで代位責任であるため,本来被用者が果たすべき責任は被用者に負わせてしかるべきと考えれば,使用者は被用者に対して全面的な求償を請求することができそうです。しかし,使用者責任の根拠②をみれば,使用者の責任は報償責任原理によって実質的に基礎づけられるのでしたから,被用者に対する求償の場面においてもこの報償責任原理は及ぼされるべきと考えられます。使用者-被用者の内部関係においても,被用者を用いることによって利益をあげている分のリスクは使用者が負ってしかるべきと考えるのです。

 したがって,求償権の法的性質は代位責任に基づく当然の請求権ということになりますが,そこには報償責任原理に基づく制限がかかることになります。最判昭51・7・8が,損害の公平な分担の見地から,信義則に照らし求償権が制限されるとしているのも同様の趣旨に出たものです。

 なお,貞友先生は,求償権の根拠を被用者の使用者に対する義務違反に求め,求償権の法的性質を不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求権と構成する考え方を示しておられます。この考え方は,使用者席の法的性質を代位責任と考えることが当然に使用者に対する求償権を導くものではないという発想を前提としています。本来当然の全面求償に対して信義則上の制限をかけるという前述の判例のような発想ではなく,全面求償が原則であるというスタートラインを設定する(100からのスタート)のではなく,あくまで損害賠償がいかなる範囲で認められるかというゼロからのスタートという考え方です。

 

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