役員等の善管注意義務違反の認定
① 取締役の具体的な義務の認定
取締役の任務(423条。または「職務」429条)の内容は,法令により定まるとともに,会社の各取締役の間の任用契約により定まる(実務的には,取締役間での職務の分掌・役割分担により各人の主な担当領域が定まる。363条1項を参照)。善管注意義務の具体的内容は,職務の分掌を前提として判断される*1。
② 義務違反の認定
損害が発生したという事後の事実から直ちに義務違反ありとする答案は,あまり良い答案ではない。
より正確に言うと,善管注意義務の違反の有無を検討する際に,そこから生じた結果を一切考慮してはならないということではないが,行為時にそのような結果が生じる可能性がどの程度高いと認識していたか,認識できたか,を問題としなければならないということである。
意思決定の時点において取締役らが認識していた事実に照らして,取締役らが下した意思決定の内容が著しく不合理である,と論じる答案であれば,一定の評価を得られるであろう*2