コム朝日記

廉価食パンについての哲学

強盗の論点

暴行の程度

 強盗罪における暴行にあたるかどうかは,「社会通念上,一般に被害者の反抗を抑圧するに足る程度のものであるかどうかという客観的基準により決せられる」(最判昭和24年2月8日)。

 反抗抑圧するに足る暴行の判断においては,被害者が現実に抑圧されたことを要しない最判昭24.2.8)。実行行為性の判断に行為の結果を要求すること自体背理だからである。ただし,現実の抑圧は,反抗抑圧するに足る暴行を要証事実する積極的な間接事実として重要となる。

 被害者の性格については,反抗抑圧の程度に至っているか否かは客観的に判断するという観点からの否定説(西田),被害者が現実に反抗抑圧されているのに恐喝罪が成立するとすれば奪取財と交付罪を区別する財産犯の体系を混乱させるし,被害者の性格もまた客観的要素を構成するという観点からの肯定説(山口)が対立する。

 

実行行為と財物奪取の因果関係

 判例は,実行行為と財物取得に因果関係があれば足りるとする(最判昭24・2・8)。対して通説は,実行行為→反抗抑圧→財物奪取という因果関係を要するとしている(山口等)。

 対立が顕在化するのは,実行行為性あり(社会通念上反抗抑圧に足る)だが,被害者は現実には犯行抑圧されず,憐憫の情から財物を交付したというような事案の処理においてであると考えられる。

 

2項強盗の不法利益取得

 処分行為は不要である(最判昭32・9・13)。奪取罪であるから。

 ただし,具体的な利益移転が必要である。抽象的な利益を得たにとどまる場合にまで2項強盗に問い得るとすると,強要罪等との区別がなくなってしまうからである。

 

240条の問題

原因行為

 強盗の手段たる暴行・脅迫に限定する(手段説)は,狭すぎる。一方,強盗の機会であれば足りる(機会説)とすると,処罰範囲が不当に拡張するおそれがある。そこで,強盗の手段に加え事後強盗類似の状況における暴行・脅迫に限定する事後強盗類似説(拡張手段説)が妥当であると考えられる。

致傷の程度

 判例は,軽微な傷害かどうかを問わない。傷害罪や他の傷害結果により加重される罪と別異に解する根拠はないとする。

主観要件

 脅迫の故意のみ,かつ致傷の予見がない場合にも,致死傷結果を帰責し得るか。少なくとも暴行の故意は必要か。

 強盗致死傷罪は,強盗の機会に残虐な行為を伴うことが多く,死傷の結果の生ずることが多いという刑事学的類型に着目するものである。そこで,暴行の故意の有無により帰責の有無を区別する理由はないから,暴行の故意を要しない(裁判例コンメンタール刑法235頁)。