コム朝日記

廉価食パンについての哲学

同時履行と信義則

 

欠陥住宅事件
最判平9・2・14
民事判例の読み方・事例1

★接合シボレーオークション事件
最判平21・7・17
民事判例の読み方・事例3

 

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Q.錯誤無効が認められる場合,履行済みの各給付は同時履行関係に立ちますか?
 双務契約上の債務については,明文で同時履行関係が認められています(533条)。
 ここで,1個の双務契約から生じた対立する債務について,同時履行の抗弁権が認められているのは,両債務が相互に一方の債務を負担するから他方も債務を負担するという関係を有するため,両債務を関連的に履行させることが公平に適するからです。
 そうだとすれば,必ずしも1個の双務契約から生じた場合でなくとも,両債務が1個の法律要件から生じ,関連的に履行させることが公平に適する場合には,広く同時履行の関係を認めるべきです。
 そこで,契約が無効又は取消された場合においても,既履行の各給付の返還義務相互間に,同時履行の関係が認められると考えます。
 したがって,錯誤無効の場合も,履行済みの各給付は同時履行関係に立ちます。

 

Q.同時履行関係はいつも認められるものなんでしょうか?
 「関連的に履行させることが公平に適する」ということが同時履行関係を認める根拠でした。したがって,このことが妥当しない場合,すなわち関連的に履行させることが公平に適さないという個別の事情がある場合には,同時履行の抗弁を許さないとするのが相当と考えられます。このことは,同時履行の主張が信義則(1条2項)に違反し許容されないという法律構成によって導くことができます。

 

*参考にしたもの
◆平成21年度主要民事判例解説 030 民法-契約 自動車の買主が,当該自動車が車台の接合等により複数の車台番号を有することが判明したとして,錯誤を理由に売買代金の返還を求めたのに対し,売主が移転登録手続との同時履行を主張することが信義則上許されないとされた事例 最高裁第二小法廷平成21年7月17日判決 安福達也:仙台地方裁判所判事