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コム朝日記

廉価食パンについての哲学

預金担保貸付

Q.他人が勝手に私の定期預金を担保とする貸付を申し込んでしまったようです。銀行はそのことを伝えてくるとともに,預金と貸付金を相殺すると通知してきました。銀行は,相殺の時点では預金担保貸付が私の意思に基づくものでないことを知っていたのですから,民478条が適用あるいは類推適用されて預金債権が消滅してしまうなんてことはないですよね?!

 判例は,同様の事案について,次のように判示しています。

最判昭59・2・23民集38巻3号445頁

金融機関が,①自行の記名式定期預金の預金者名義人であると称する第三者から,その定期預金を担保とする金銭貸付の申込みを受け,②右定期預金についての預金通帳及び届出印と同一の印影の呈示を受けたため同人を右預金者本人と誤信してこれに応じ,③右定期預金に担保権の設定を受けてその第三者に金銭を貸し付け,④その後,担保権実行の趣旨で右貸付債権を自働債権とし右預金債権を受働債権として相殺をした場合には,少なくともその相殺の効力に関する限りは,これを実質的に定期預金の期限前解約による払戻と同視することができ,また,そうするのが相当であるから,右金融機関が,当該貸付等の契約締結にあたり,右第三者を預金者本人と認定するにつき,かかる場合に金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしたと認められるときには,民法478条の規定を類推適用し,右第三者に対する貸金債権と担保に供された定期預金債権との相殺をもって真実の預金者に対抗することができるものと解するのが相当である(なお,この場合,当該金融機関が相殺の意思表示をする時点においては右第三者が真実の預金者と同一人でないことを知っていたとしても,これによって上記結論に影響はない。)。

※①~④の番号は引用者が付しました。

 この判決は,(1)預金担保貸付・相殺について民法478条が類推適用されること,(2)金融機関の善意無過失の判断基準時は貸付時であること,の二点を明らかにしました。
 (1)について,民法判例百選Ⅱ第6版37事件解説(中舎寛樹教授)は,判例理論のねらいは「預金担保貸付け・相殺という仕組みの全体を弁済類似の行為と捉え,預金者を誤認した場合であれ,貸付先を誤認した場合であれ,預金担保貸付けの範疇で生じた問題についてはすべて同様に扱うというところにあるといえる」と説明されます。
 また(2)については,「預金担保貸付けの場合における金融機関の誤認は,478条の典型例とされている預金の払戻しの場合の誤認が弁済の時点で生じるのと異なり,貸付けの時点ですでに発生しており,後の相殺の時点ではじめて生じるのではない。判例のねらいが預金担保貸付けという仕組み自体の保護にあるとするならば,貸付け時における金融機関の誤認を保護しなければならず,そのことからすれば善意無過失の判断時が貸付け時であるとされたのは当然であったということができよう」と説明されます。
 さらに,貸付時の善意無過失に加え実際に相殺までなされたことを要するかという点については,貸付行為自体に478条を類推適用した最判平9・4・24民集51巻4号1991頁を紹介されています。