読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

コム朝日記

廉価食パンについての哲学

同時履行と信義則

法学 民法

 

欠陥住宅事件
最判平9・2・14
民事判例の読み方・事例1

★接合シボレーオークション事件
最判平21・7・17
民事判例の読み方・事例3

 

http://picture1.goo-net.com/7000902905/20120908/J/70009029052012090800100.jpg


Q.錯誤無効が認められる場合,履行済みの各給付は同時履行関係に立ちますか?
 双務契約上の債務については,明文で同時履行関係が認められています(533条)。
 ここで,1個の双務契約から生じた対立する債務について,同時履行の抗弁権が認められているのは,両債務が相互に一方の債務を負担するから他方も債務を負担するという関係を有するため,両債務を関連的に履行させることが公平に適するからです。
 そうだとすれば,必ずしも1個の双務契約から生じた場合でなくとも,両債務が1個の法律要件から生じ,関連的に履行させることが公平に適する場合には,広く同時履行の関係を認めるべきです。
 そこで,契約が無効又は取消された場合においても,既履行の各給付の返還義務相互間に,同時履行の関係が認められると考えます。
 したがって,錯誤無効の場合も,履行済みの各給付は同時履行関係に立ちます。

 

Q.同時履行関係はいつも認められるものなんでしょうか?
 「関連的に履行させることが公平に適する」ということが同時履行関係を認める根拠でした。したがって,このことが妥当しない場合,すなわち関連的に履行させることが公平に適さないという個別の事情がある場合には,同時履行の抗弁を許さないとするのが相当と考えられます。このことは,同時履行の主張が信義則(1条2項)に違反し許容されないという法律構成によって導くことができます。

 

*参考にしたもの
◆平成21年度主要民事判例解説 030 民法-契約 自動車の買主が,当該自動車が車台の接合等により複数の車台番号を有することが判明したとして,錯誤を理由に売買代金の返還を求めたのに対し,売主が移転登録手続との同時履行を主張することが信義則上許されないとされた事例 最高裁第二小法廷平成21年7月17日判決 安福達也:仙台地方裁判所判事

 

民法478条の主張と信義則

法学 民法

Q.無権限で預金を払戻した者に対する,預金債権者からの不当利得返還請求訴訟において,被告が「払戻しに準占有者弁済は成立しないから,預金債権は失われていない」と主張することはできますか?

最判平16・10・26】

X:原告,Y:被告,B:金融機関

「Yは,BはX相続分の預金の払戻しについて過失があるから、上記払戻しは民法478条の弁済として有効であるとはいえず、したがって、Xが本件各金融機関に対して被上告人相続分の預金債権を有していることに変わりはないから、Xには不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないなどと主張して、Xの上記請求を争っている。」

「そこで検討すると、

 (1)Yは、Bから被上告人相続分の預金について自ら受領権限があるものとして払戻しを受けておきながら、Xから提起された本件訴訟において、一転して、Bに過失があるとして、自らが受けた上記払戻しが無効であるなどと主張するに至ったものであること、

 (2)仮に、Yが、本件各金融機関がした上記払戻しの民法478条の弁済としての有効性を争って、Xの本訴請求の棄却を求めることができるとすると、Xは、本件各金融機関が上記払戻しをするに当たり善意無過失であったか否かという、自らが関与していない問題についての判断をした上で訴訟の相手方を選択しなければならないということになるが、何ら非のないXがYとの関係でこのような訴訟上の負担を受忍しなければならない理由はないこと

などの諸点にかんがみると、Yが上記のような主張をしてXの本訴請求を争うことは、信義誠実の原則に反し許されないものというべきである。」

不当利得と不法行為 〈問のみ・未完〉

法学 民法

Q.不当利得として返還請求できるところの金銭を「損害」として不法行為に基づく賠償請求をすることが認められるのはなぜでしょうか?

 その金銭について,不当利得として返還請求ができるならば,不法行為による「損害」が生じていないことになるではないか,とも思えます。

 「実体上不当利得返還請求の対象になる」ことを強調すれば,結局不当利得として返還されるべきものなのだから,その金銭を「損害」として捉えるのは不自然であると考えれらます。

 一方,「実際に不当利得返還請求をせず,不法行為責任のみを追及する」ことを考えると,不当利得返還請求をしない以上はその金銭が債権者のもとに戻ってくるあてがないため,「損害」として捉えることが容易であると考えられます。

代償請求権

民法 法学

Q.判例は,代償請求権についてどのように定義していますか?

最判昭41・12・23は,「一般に履行不能を生ぜしめたと同一の原因によって,債務者が履行の目的物の代償と考えられる利益を取得した場合には,公平の観念にもとづき,債権者において債務者に対し,右履行不能により債権者が蒙りたる損害の限度において,その利益の償還を請求する権利を認めるのが相当であ」ると判示しています。

 

Q.判例は,代償請求権の根拠をどこに求めていますか?

 前掲最判昭41は,「民法 536条 2項但書〔現行 2項後段〕の規定は,この法理のあらわれである」としています。

 しかし,536条2項後段は,債務者が自己の債務を免れたことによる利益の償還に関する規定であって,「目的物の代償と考えられる利益を取得した」ケースまでも包含するものではないと考えられます。したがって,同規定を判例の定義にいう代償請求権の十分な法的根拠とすることはできないと考えられます。

 百選Ⅱ6版9事件(田中宏治)も,判例の挙げる根拠は不適切であるとしています。

 

Q.では,代償請求権の根拠法的性質をどのように考えればよいのでしょうか?

 仮に不当利得として構成するならば,次のように考えることができるのではないでしょうか。

 すなわち,「目的物の代償と考えられる利益の取得」であっても,少なくとも当該利益移転の当事者間にあっては,当該利得に何らかの法律上の原因があると考えられます。したがって,当該利得を当然に法律上の原因を欠くものとして扱うことはできません。しかし,不当利得法の趣旨たる「公平の観念」にまで遡って考えれば,履行不能にかかる債務の債権者(X)-債務者(Y)間においては,当該利得を債務者に保持させておくことは実質的に「公平の観念」に反すると評価できますから,Xとの関係では,Yが取得した目的物の代償と考えらえる利益の保持には法律上の原因を欠くと評価することが可能です。

 ここでは,「目的物の代償と考えられる利益」をYに保持させておくことが「公平の観念」に反すると評価できることがポイントとなると考えられます。この評価を正当化するにあたって,民法が「公平の観念を欠く利得は吐き出させるべきである」という考え方を採っていることの証左として536条2項後段を挙げることは可能であると考えられます。もっとも,「利得の吐き出し」という効果を導く明文は存在しないことから,形式的には正当化される代償利益の保持について,「吐き出させるべき」という評価を加えることはかなり困難ではないかとも考えられます。

平8民1 危険負担,債権侵害,物上代位,代償請求 <未完>

法学 旧司法試験 民法

〔旧司法試験平成8年民法第1問〕

 Aは、Bに対する債務を担保するため、自己所有の甲建物に抵当権を設定し、その旨の登記を経由した。その後、Aは、Cに甲建物を売却したが、Cへの所有権移転登記を経由する前に、Dの放火により甲建物が全焼した。

 この場合に、A、B及びCは、それぞれDに対して損害賠償を請求することができるか
 AがDに対して損害賠償を請求することができるとした場合、AのDに対する損害賠償請求権又はDがAに支払った損害賠償をめぐるB及びCの法律関係はどうなるか。

 

f:id:zwkn:20170324125928p:plain

(貞友民法の図)

 

Q.AC間で甲の所有権は移転しているのでしょうか?

 176条に依拠して債権合意によって所有権が移転するという考え方(意思主義)を採用すると,所有権はCに移転していることになります。

 

Q.Cに所有権が移転していると考える場合,Aにどのような「損害」が発生していると考えることができますか?

 Cに所有権が移転していると考える以上,「Aの所有権が侵害された」という意味での「損害」を認めることはできません。そこで,Cとの売買契約関係に着目して,Aに何か損害が生じていないかを考えてみます。

 甲の売買は「特定物に関する物権の…移転を双務契約の目的とした場合」にあたりますから,Dの放火という「債務者の責めに帰することができない事由」でありかつ「債権者の責めに帰すべき」(536条2項)でない事由によって目的物である甲が滅失しているので,その滅失は債権者Cの負担に帰することになります(534条1項)。この条文を素直に適用すると,Cは甲を給付してもらえないにもかかわらず,Aに対し代金を支払わなければならないのです。このとき,AはCから代金を支払ってもらえるため,一見,Aに損害があるとは思えません。しかし,たしかに法律上はCに対して代金の支払いを請求できるものの,甲が燃えてしまったのにCが素直に代金を払ってくれるということは事実上想定しがたいといえます。そうすると,Aとしては,Cに対して法律上有する代金債権を実現するために,費用をかけて裁判をすることになります。ここで,甲が燃えてしまったがために余分に生ずることとなった裁判費用が,Aにとっての「損害」であるということができます。

 一方で,534条1項の危険負担の債権者主義を制限的に解釈した場合,本件において,AがCに対し甲を既に引き渡していたり,代金を既に受け取っていたりしているという事情がある場合に限って,危険がCに移転することになります。すなわち,これらの事情がない場合には,甲が滅失してもCは代金を支払う必要はありません。このとき,本来Cに対して請求できたはずの売買代金債権が,甲の滅失及び危険負担の債務者主義の適用によって消滅してしまったという「損害」が,Aに生じているということができます。

 

Q.Aの認められる「損害」について,Dに不法行為に基づく賠償責任を負わせるうえで問題となる点はありますか?

 Aに「損害」が認められていても,不法行為責任の成立には,加害行為が故意・過失に基づくことが必要となります。

 そして,Aに生じた損害は,代金債権の実現が困難になった,あるいは代金債権が消滅してしまったという,いずれもいわゆる「債権侵害」の結果であるといえます。債権侵害を理由とする不法行為については,債権の存在は第三者が認識することが困難であることから,加害者が債権の存在を認識していなかったがゆえに,故意・過失の要件を満たさないということが容易に想定されます。

 本件においても,Dの,AのCに対する売買代金債権の侵害を理由とする不法行為責任を認めるためには,Dにおいてその債権の存在を認識していたことが必要となります。したがって,Dにそのような認識がない場合(通常は認識がないと思われます),Dの不法行為責任は認められないことになります。

 

Q.Cに所有権が移転していると考える場合,Cにどんな「損害」が発生していると考えることができますか?

 Cに所有権が移転していると考える場合,CはDの放火によって甲の所有権を侵害されたことになり,甲の時価相当額+得べかりし利益の損害を被っていることになります。

 なお,AC間の危険負担について,Cが危険を負担する(CがAに代金を支払う)という考え方を採ったとしても,このときに支払う代金は所有権移転の対価としてのものであるため,所有権侵害に加えて代金分を損害として構成することはできません。

 

Q.Aの債権侵害に基づく損害賠償請求(Aが危険を負担するとした場合)と,Cの所有権侵害に基づく損賠賠償請求とは,どのような関係に立つのでしょうか?

 Aの損害賠償請求は「甲の対価たる代金を支払ってもらえなくなった」,Cの損害賠償請求は「甲の所有権を侵害された」というものであって,両者は「対価なく甲を失った」という点で共通しています。したがって,これらは内容こそ違えど,「対価なく甲を失った」という一つの現象についての損害賠償請求であるため,Dに二重払いを強いることはできません。そこで,これらは不真正連帯債権の関係にあるとすべきです。

 ただし,DがACのいずれかに支払った場合においても,それによって実現されるのは「対価なく甲を失った」という状態のひとまずの治癒にとどまります。すなわち,支払いを受けられなかった一方については,何ら損害が賠償されたことになっていないのです。ここで,支払いを受けられた者と受けられなかった者との間における公平を実現するための利益調整が必要となります。

 ここでは,支払いを受けられなかった者が,支払いを受けた者に対して,代償請求権を行使することが考えられます。代償請求権は,〈要件〉①ある債務が債務者の帰責事由なく履行不能になったとき,②履行不能の原因と同一の原因によって,③債務者が履行不能となった債務の目的物の代償と考えられる利益を取得した場合,〈効果〉債権者が債務者に対し,その履行不能により債権者が被った損害額を限度として,③の利益を償還することを請求できる,というものです。本件では,①AのCに対する甲の引渡債務が履行不能となっており,②Dの放火による甲の滅失という引渡債務の履行不能原因と同一の原因によって,③(ア)Cは所有権侵害についての損害賠償請求権,(イ)Aは債権侵害についての損害賠償請求権を取得しています。そして,ACのいずれかがその弁済を受けた場合には,「履行不能となった債務の目的物の代償と考えられる利益を取得した」といえることになります。

 DがCに支払った場合を考えます。このとき,一方でAは放火による甲の滅失という原因により代金請求権が消滅したことについての損害賠償債権を取得しつつもその満足を受けられず,他方で同一の原因によりCは代金債務を免れるとともに所有権侵害についての損害賠償請求権を取得し,その支払いを得ています。この場合,公平の観念に基づき,Aは,代金債権消滅によって被った損害の限度において,Cに対して当該金銭の償還を請求できると考えるべきです(代償請求権)。ここでは,Cの有していた利益は,Dとの関係では不法行為に基づく損害賠償請求権という法律上の原因に基づくものであったといえますが,Aとの関係では公平の観点から利益保持につき法律上の原因を欠くとして,不当利得に基づく返還請求という法律構成により償還を請求するものと考えられます

  DがAに支払った場合を考えます。このとき,一方でAは放火による甲の滅失という原因により代金請求権が消滅したことについての損害賠償債権を取得しその満足を受け,他方で同一の原因によりCは代金債務を免れるとともに所有権侵害による損害賠償請求権を取得するも,その支払いを受けられていません。

会社法467条1項「事業」の意義

法学 商法

Q.会社法467条1項1号2号にいう「事業」は,判例上どう定義されていますか?

 判例上は,次のように定義されています。

「 営業そのものの全部または重要な一部を譲渡すること、詳言すれば、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた営利的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に同法25条(※現会社法21条)に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいう」(最高裁昭和40年9月22日判決)

 

Q.判例そのように定義する理由は何でしょうか? 

 葉玉先生は,「事業」の意義について次のように述べられています。

 一つ一つの財産が、それぞれの役割に応じて結びつき、利益を生み出すような形で保持されている財産の集まりを「客観的意義の事業」と言い、その客観的意義の事業(財産)を、役員や従業員等人の力で実際に動かして、利益を生み出していることを「事業活動」と言います。

法律的に言うと、客観的意義の事業は「有機的一体として機能する財産」と表現され、主観的意義の事業(事業活動)は「その財産によって営まれる活動」と表現されます。

【出典】会社法であそぼ。:事業譲渡の「事業」の意義

 判例にいう「一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産」とは,「客観的意義の事業」を指すと考えられます。そして,「譲渡会社がその財産によって営んでいた営利的活動」とは「事業活動」を指すと考えられます。

 また,葉玉先生は,競業避止義務の発生する「事業の譲渡」 の意義につき,次のように述べられています。

私達が、譲受人に「明太子の製造販売事業」(事業活動)を売ったのならば、隣接市町村で同じ明太子屋をやるのは禁止されて当然ですが、「土地・店舗・食品加工設備など食品の製造販売を行うのに便利な財産セット」(客観的意義の事業)を売ったのならば、競業避止をかけるべきではない。
 そういう価値観のもとで、21条1項の「事業の譲渡」は、事業活動の承継を含むものと解釈されているのです。

【出典】会社法であそぼ。:事業譲渡の「事業」の意義

 

請負人の担保責任:修補に代わる損害賠償と請負代金の同時履行

法学 民法

Q.修補に代わる損害賠償(634条2項)が選択された場合,請負人は,損害賠償債権を受働債権,請負代金債権を自働債権とする相殺ができるのですか。

 

Q.相殺がされない場合,634条2項後段によれば両債権は同時履行関係となりますが,注文主は請負代金全額との同時履行を主張できるのですか。

 注文者は,634条1項に基づく瑕疵修補を選択した場合には,瑕疵修補が完了し目的物が引き渡されるまでは,代金全額を支払う必要がありません(633条本文)。このことと,修補に代わる損害賠償を選択した場合との均衡を考えると,損害賠償と請負代金全額との同時履行は,原則として認めるべきと考えられます。

 しかし他方で,634条1項ただし書に当たるような場合には,注文者は瑕疵修補を請求をすることができず,損害賠償請求ができるにとどまります。このような場合には,注文者はそもそも修補に代わる損害賠償を請求することができません。この規定との均衡を考えると,瑕疵が軽微にとどまる場合においても報酬残債権全額について支払いが受けられないとなると,請負人にとって不公平な結果となってしまいます。

 そこで,このように修補に代わる損害賠償請求自体ができない場合にまでは至らなくとも,①瑕疵の内容が契約の目的や仕事の目的物の性質等に照らして重要でなく,かつ②その修補に要する費用が修補によって生ずる利益と比較して過分であると認められる場合には,③各契約当事者の交渉態度などの他の事情も併せ考慮して,報酬残債権全額との同時履行を主張することが信義則に反する場合もありえると考えられます(最判平9・2・14)。